赤沢亮正、石破茂は関税合意を破棄しろ。EUと比べて条件が悪すぎるからだ。 しないなら言いなり下僕対自民、対トランプ闘争を開始する。期限は9月30日だ。石破の在任中に決めろ。破棄がなかったら10月1日に戦いを開始する。
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参考記事
自民総裁選、なぜ触れない80兆円対米投資。石破・赤沢の「置き土産」逃亡で、国と国民生活は火の車に!
■新総裁=新首相が拾わねばならない「火中の栗」
本当に不思議なのは、なぜこの時期に自民党総裁=次期首相になろうとする政治家が5人もいるのかということ。もしなったとしたら、新首相は「火中の栗を拾う」ばかりか、この国と国民生活をどん底に突き落としかねない事態に遭遇する。
候補者5人は、このリスクを本当にわかって出馬しているのだろうか?
そのうえで、「強い経済を実現する。日本をもう1度世界のてっぺんへ」「2030年度までに国内投資135兆円、平均賃金100万円増を目指す」などと、本気で言っているのだろうか?
もしそうなら、その覚悟は相当なものと言わざるをえない。
ここで言う「火中の栗」とは、石破茂首相と担当の赤沢亮正経済財政・再生相がトランプ政権と関税率15%と引き換えに合意した対米投資5500億ドル(約80兆円)である。もちろん、ほかにも問題は山積しているが、この問題が現在の日本が直面している最大の問題であると言っていいだろう。
■負の「置き土産」を残して石破・赤沢は“逃亡”
はたして、新総裁=新首相は、この約80兆円をどうクリアするのか? うまくクリアできなければ、大幅な円安によるインフレが襲ってきて、小手先の物価対策などでは手に負えない事態に追い込まれる可能性がある。
それなのに、なぜかメディアは、候補者たちにこの問題を問わない。そしてなぜか、候補者たちはおしなべてこの問題に触れない。
トランプ関税交渉は、明らかな外交の大失態だ。公開された覚書を見れば「令和の不平等条約」と言われるのも当然である。石破首相と赤沢経済財政・再生担当相はこのまま“逃亡”すればいいが、新首相は、彼らの負の「置き土産」に真っ向から向き合わなければならない。
■トランプ大統領来日で新首相は窮地に立たされる
赤沢経済財政・再生相は「不平等条約ではない。ウィンウィンだ」と繰り返し述べているが、交渉相手の商務長官のハワード・ラトニックは、「投資先はトランプ大統領自身が決定し、決まれば45日以内に日本が資金を提供し、利益の90%はアメリカが持っていく」と述べている。
トランプ大統領自身も、「野球選手が受け取る契約金のようなもの」「アメリかが好きなように使える」と自慢している。しかも、トランプ大統領は、10月後半のAPECに合わせて来日するという。石破首相が訪日要請の親書を渡したからだ。
いくらTACO(Trump Always Chickens Out:トランプはいつもビビってやめる)とはいえ、トランプと直接会談せねばならない新首相が、窮地に立たされるのは間違いないだろう。
■投資のすべてにおいてアメリカが主導する
実際のところ、これまで公表された投資スキームを見れば、不平等なのは明らかだ。「ウィンウィン」は、1ミリもない。
まず、日米は投資先を選定するために投資委員会と協議委員会を設立する。そうして、投資委員会の議長にはアメリカの商務長官が就く。委員会は投資先を決め、それをアメリカ大統領に推薦し、アメリカ大統領は候補の中から投資先を選ぶ段取りになっている。
こうして決まった投資先は、日本に通知され、その通知を受けて日本は投資資金を直ちに入金する。投資に関しては特別目的事業体(SPV)を設立し、その管理者はアメリカ側が指名する。
そして、投資から得られた利益(出るかどうかわからない)は日本10%、アメリカ90%で分配される。このスキームによる投資は、2029年1月19日まで随時行われるとされる。
以上、すべてにおいてアメリカ主導であり、日本が口を挟む余地はほとんどない。しかも、80兆円という額は巨額で、その捻出は簡単なことではない。
■貿易赤字から見てEUと比べるとあまりにも巨額
トランプ関税の目的は、大統領自身が口にしているように「製造業のアメリカ回帰」と「貿易赤字の解消」である。
そこで、アメリカの対日貿易赤字を見ると、2024年の貿易赤字国ランキングで日本は第7位、その額は約685億ドル(約10兆2000億円)である。
ちなみに、第1位は中国の約2954億ドル、第2位はメキシコの約1235億ドル、第3位はベトナムの約1235億ドルなので、対日貿易赤字はそれほど多いわけではない。
それなのに、5500億ドルというのは、EUの6000億ドル(約89兆円)と比べると、あまりに巨額である。EUに対するアメリカの貿易赤字は約2370億ドル(このうちドイツは約830億ドル)だからだ。
また、EUは日本の約5倍の経済規模があるのに、日本とほぼ同じ額というのは、あまりにも差をつけすぎではないだろうか。
EUの対米直接投資は、毎年平均で約1400億ドルである。ということは、これをおよそ1.5倍にすれば、期限内の2028年内に達成が可能だ。しかし、日本の対米直接投資は約400億ドルなので、3年間で5500億ドルを達成するには、およそ5倍にしなければならない。
■日本と違って投資先を決められリターンもある
EUと比べて、日本の条件があまりに厳しいことは、その額もさることながら、投資のスキームがまったく違うことにもある。EUとアメリカの合意では、投資先を決めるのは、アメリカ大統領ではなく欧州企業となっている。
また、投資から得たリターンは、日米合意では1対9だが、EUとの合意ではリターンはすべて欧州企業に帰属し、アメリカとしては雇用や設備投資等を通じたマクロ経済における恩恵だけを受けることになっている。
しかも、EUとの共同声明の文面は、「欧州企業は2028年までに戦略的分野においてアメリカに追加で6000億ドルを投資することが期待される」(European companies are expected to invest an additional $600 billion across strategic sectors in the United States through 2028.)となっていて、EU側に義務を課していない。
■「円を売ってドルを直接買う」ことを否定
一般的に考えて、日本からアメリカのプロジェクトや企業に投資する場合、円を「ドル転」して先方に入金する。となると、80兆円もの巨額な円売りが生じるわけで、当然、大幅な円安を招く。円安はインフレを加速させる。
そうなれば、総裁候補たちが口を揃えて言う、ちまちまとした「物価高対策」など、効果がなくなってしまうだろう。
しかし、赤沢経済財政・再生相は「円を売ってドルを直接買うような取引は基本的に発生しない」と述べている。
その理由は、彼の説明によると、投資額の半分は国際協力銀行(JBIC)による融資、日本貿易保険(NEXI)による保証を活用してまかなう。JBICからの融資は、外為特会(外国為替資金特別会計)の預金、運用収入、債券償還金を使う。そして、残りの半分は、政府保証付きのドル建ての債券の発行や通貨スワップで用立てる。
だから、大丈夫だと言うのである。しかし、これは一種のゴマカシだ。
■収益が上がる資産がリスクのある投資資金に替わる
日経新聞の記事「対米投資80兆円の置き土産」(9月19日付)は、赤沢経済財政・再生相の発言を検証して、外為特会ははたして打ち出の小槌なのかと疑問を呈している。
結局、米国債を取り崩すわけで、保有していれば日米金利差分だけ収益が上がる資産を、リスクのある投資資金に替えてしまうことになる。
また、外為特会の米国債は、税外収入として、毎年の財政を支えてきたという一面がある。これを失うことも、大きなマイナスだ。
ちなみに、現在、日本の外貨準備は約1兆3000億ドルで、外貨建て証券が約9800億ドル。このうちの約8割が米国債とすると、その額は約7800億ドル。対米投資5500億ドルがいかに大きな負担かわかる。
さらにまた、外貨準備高の大きさは、日本の対外信用を支えている。それを失うダメージは大きく、円安を加速させる要因になる。
■日本と同条件では飲めないとゴネる韓国
日本と同じく、その経済規模、貿易赤字額から見て、法外な対米投資を求められているのが韓国である。韓国がトランプ政権から突きつけられた額は3500億ドル(約51兆円)。
いちおう額では合意している、というか飲まざるをえないとしているが、日本と同じようなスキームはとても飲めないとしてゴネ続けている。
李在明大統領は、「韓国は1997年のアジア通貨危機のような状況に直面するだろう」と述べ、無制限無期限スワップと投資先の決定権、利益配分の5分5分などを要求している。
なにしろ、韓国の外貨準備高は約4100億ドルで、3500億ドルというのは、その約85%に相当する。これを外貨スワップという安全装置なしに拠出したら、ウォンは暴落してしまうだろう。
■日本が救われる唯一の道は「違憲判決」
石破・赤沢コンビが不利な“ディール”をしてしまったにもかかわらず、その責任を追及するメディアは少ない。「外交勝利」とまで報道するメディアがあるのには、本当に呆れる。
ただし、日本が救われる道は、一つだけ残されている。
それは、トランプ関税が連邦最高裁で「違憲」と判断されることだ。すでに、1審では違憲判決が出て、2審の控訴裁判所でも、「国際緊急経済権限法」(IEEPA)に基づいた大統領令による関税は違憲であるという判決が下されている。
税を課せるのは国民の代表の議会であって、大統領ではないという、当たり前の判断である。
しかし、トランプは上告。最高裁にまで行くことになり、最終判決は来年の6月までに出るとされている。もし、最高裁でトランプ関税は違法であるとの判決が出れば、これまで徴収した関税は返却しなければならないうえ、合意事項であるアメリカへの巨額投資も反故になる可能性がある。
ただし、支持者に議会襲撃を煽った大統領が、簡単に司法の判断に従うだろうか。自分の非を絶対認めない人間だけに、なにをやるかわからない。いずれにせよ、トランプがレイムダック化し、権力を失なわない限り、日本は救われない。新首相が誰になろうと、これは変わらない。まったくもって、哀しい自民党総裁選である。
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